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アカミミガメ
学名:
Trachemys scripta

脊椎動物爬虫綱カメ目ヌマガメ科

Nag00688 (更新日:2017.5.19) 第一報告者:都市基盤整備公団, 2000.3.31

解説

アカミミガメ(Trachemys scripta)に関する情報
○原産地 アメリカ合衆国から南米大陸北西部まで(約16 の亜種に分けられる)
○定着実績 亜種ミシシッピアカミミガメT. s. elegans が全国に定着している。また、基亜種キバラガメT. s. scripta も逸出個体がしばしば見られる。

○評価の理由
野外に広く定着しており、在来種への競合等による影響がある可能性があるが、繁殖確認事例は少ない。大量に飼育されており規制により代替となるカメ類の輸入が増大する可能性や、大量に遺棄される可能性などが考えられ、今後の被害知見の集積とともに、遺棄のリスク評価や普及啓発が重要である。

○被害の実態・被害のおそれ
○生態系に係る被害
● 高密度に生息し、在来のカメ類と資源(例えば日光浴の場所や食物等)が重複し、またさまざまな動植物を摂食することから、定着地域では在来のカメ類や水生植物、魚類、両生類、甲殻類等に大きな影響を及ぼしていると想定される(文献BCD)。
● 最も大量に(年間数十万匹から100 万匹)輸入されている爬虫類である。消耗品扱いされ、多数の個体が遺棄され、逸出しており、わが国で最も普通に見られるカメとなっている。

○被害をもたらしている要因
(1)生物学的要因
● 雑食性で、水草の他、魚類、両生類、甲殻類、貝類、水生昆虫や水鳥の死体などを広く摂食する。在来種のカメ類と、食物や日光浴場所、産卵・越冬場所が類似し競合する。
● 繁殖能力が高い(在来の淡水産カメ類よりも産卵数が多く、1回に20 個を越える卵を産むことがある。年に数回産卵する)。
● 頑健で汚染にも強く、都市部のきわめて汚れた河川でも生存できる。

(2)社会的要因
● 本種の幼体はペット用として大量に流通しており、安価で販売されている。年間の輸入量は数十万から百万匹と推定される。
● 飼育は容易であるが、大型に成長し攻撃的になるため、飽きられたり持て余されたりしやすく、大量の遺棄が続いている。
● 1975 年頃のサルモネラの感染報道がなされた際にまとまった遺棄が起こったと言われる。

○特徴ならびに近縁種、類似種などについて
● 種アカミミガメには、ミシシッピアカミミガメやキバラガメを含め、3〜16程度の亜種が含まれる。
● 雄より雌の方が大型になる。雄は背甲長20cm、雌は28cm、2.5kg 程度まで成長し、在来のイシガメ(1kg 前後)やクサガメ(2kg 弱)に比して大型である。
● 頭部の両脇に目立つ赤い斑が見られる。雄成体では不明瞭になることもある。日本在来の類似種はいない。

○その他の関連情報
● 輸入と遺棄の禁止が野外における個体数の低減に結びつくとみられ、輸入禁止等の対策の効果は高いと推定される。一方で、本種を規制すれば、都市部を中心に大量に遺棄される可能性がある。
● 飼養者に子供が多くいるとともに、学校や幼稚園等における飼育もなされていることから飼養状況を把握しづらく、規制を徹底させることが現時点では困難である。飼養者に対する普及啓発が重要である。
● 世界的に見ても、最も流通量の多い爬虫類である。
● 南アフリカではすでに輸入が禁止されており、2003 年より韓国でも輸入が禁止された。ヨーロッパ諸国でも輸入を禁止にする動きがある。
● アメリカ合衆国の連邦法では甲長4 インチ以下の子ガメの販売が禁止されている。ただし、輸出用に限り流通は認められている。
● 本種の規制により、クサガメ、アカミミガメ以外のスライダーガメ属Trachemys、クーターガメ属Pseudemys のようなカメ類が代価のペットとして大量に流通するようになる可能性がある。
● IUCNの「世界の侵略的外来種ワースト100」に選定されているとともに、亜種ミシシッピアカミミガメが日本生態学会の「日本の侵略的外来種ワースト100」に選定されている。

○注意事項
● 野外で確認される多くの個体が、遺棄か逸出が原因とされる。飼育に関するマナーの向上が特に必要である。
● 販売、飼育にあたっては、長生きすることや大きくなることを十分理解し、飼い主が責任を持って飼育することを確認する必要がある。
● 輸入、販売の関係者も、安易に購入して遺棄されるようなことのないよう、販売方法や飼育者への普及啓発に積極的に取組むべきである。

○主な参考文献
@ Ernst, C. H. and R. W. Barbour (1989) Turtles of the World. Smithsonian Institution Press, 313pp.
A 太田英利(1995) 琉球列島における爬虫・両生類の移入, 沖縄島嶼研究,13:63-78.
B 日本生態学会(編) (2002) 外来種ハンドブック. 地人書館, 390pp.
C 矢部 隆 (2003) ミシシッピアカミミガメ − 日本で最もよく見られるカメ-. 滋賀県琵琶湖博物館企画展示資料: 72-73.
D Thomas G. Hinton and David E. Scott (1990), Radioecological Techniques for Herpetology, with an Emphasis on Freshwater Turtles, Life History and Ecology of the Slider Turtle, 267pp.

[環境省、要注意外来生物に係る情報及び注意事項
http://www.env.go.jp/nature/intro/1outline/caution/detail_ha.html#1
より引用]

フォトデータ一覧

アカミミガメ

(木原 章 , 2005.3.26)

アカミミガメ 正体不明

(しまりん, 2006.5.20)

アカミミガメ

(内野秀重, 2006.6.16)

アカミミガメ

(しまりん, 2007.6.20) 7

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