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ネズミムギ
学名:

植物単子葉植物綱イネ目イネ科

Nag00410 (更新日:2017.5.19) 第一報告者:都市基盤整備公団, 2000.3.31

解説

[以下、東京都高尾自然科学博物館パンフレットより許可を得て引用]
日本にはヨーロッパから牧草として持ち込まれ、野生化した帰化植物がたくさんあります。ネズミムギもその一つで、ライグラスと呼ばれる牧草でした。もともとヨーロッパは寒冷で雨も少なく、栽培できる作物も限られている上に生産性は低かったので、牧畜は食料生産の重要な部分を占めていました。人には食べられない固い草しか育たない所で、その草を人が食べられる肉や乳に変えてくれる家畜は、人が生きていくために必要だったのです。
 草原の草はもちろん野生動物も食べます。たとえ牧畜が行われていなくても、植物は動物に食べられるという危険から逃げ隠れすることができません。だからといって食べられるままになっていたのでは、植物は滅びてしまいます。ネズミムギの仲間にドクムギLolium temulentum L.という植物がありますが、この名は果実に毒があることがあって、家畜が中毒するからです。
 毒を作らないでも、食べられることに抵抗する手段はたくさんあります。イネの仲間は土壌から、他の植物はあまり吸収しない珪酸を吸収して体に蓄え、ガラスの粒のようなものを作りますが、これも食べにくい体を作る工夫かもしれません。成熟した植物は、特別な毒物がなくても、動物には消化できないセルロースやリグニンなどが体の大部分を占めているので、動物にとっては食べにくい植物なのです。
 食べられることに抵抗する手段として「強い再生能力」もあります。イネ科植物は生長点が地表近くにあるものが多く、葉先を食べられても生長点が次々と新しい葉を作るので、生長点の組織から作りなおされなければならないような植物に比べると、ずっと「食われ強い」ものになります。
 おまけに食べられることで大きなダメージを受けるような植物は、頻繁に草食動物が来るような所では大きく生長する機会がないので、生長点を地表近くに持つ植物は、大きくならなくても、いつも十分な光の当たるところに葉を広げることができて、ダメージから回復するのも早いはずです。
 牧草にはこうした「食われ強い」植物が多く含まれています。むしろ毒もなく、動物に「食われ強い」からこそ、牧草として残ったと言えるかもしれません。

フォトデータ一覧

ネズミムギ

(内野秀重, 2007.4.30)




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