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Nag00400 (更新日:2017.5.19) 第一報告者:都市基盤整備公団, 2000.3.31
[以下、東京都高尾自然科学博物館パンフレットより許可を得て引用] 花粉症といえば、スギやヒノキが思い浮かびますが、スギやヒノキの花粉の季節が終わっても花粉症の症状が 続く人が、増えています。その原因になっている植物として、春から初夏に花の咲くイネ科植物があげられています。カモガヤも初夏に花の咲くイネ科植物の一つで、牧草としてヨーロッパから持ち込まれました。 花粉症の原因になるのは、花粉を風で飛ばす風媒花だからです。風任せで他の株のめしべに到達するには、行方不明になる危険を考慮に入れて虫媒花よりもたくさんの花粉をつくる必要があります。その結果、はなの時期にはたくさんの花粉が空中にただようことになるので、人の鼻や喉や目にも入り込み、アレルギーの元になりやすいのです。一次セイタカアワダチソウが秋の花粉症の原因とされたことがありましたが、虫媒花のセイタカアワダチソウの花粉は、量も少なく、空中にただようようにはできていないので、単なる濡れ衣でした。むしろ蜂蜜の蜜源として、都市近郊では貴重な花でさえあったのです。 もちろん植物は人を苦しめるために花粉をつくるわけではありません。また、花粉症は比較的近年になって増えてきたもので、人の生活が急激に変わったことと関係がありそうです。その原因に、大気汚染によって空気中の異物を体外に出す能力が落ちたこととか寄生虫がいなくなったので、本来体の中に入った異物を片づけるための免疫が、過剰に反応しやすくなったことなどが、あげられています。 風で花粉を飛ばすのは、効率が悪いからこそたくさん花粉をつくるはめになるのですが、その反面で虫がいなくても困らないし、虫を引きつけるための大きくて派手な花弁や蜜をつくらなくてもすむという利点もあります。 イネ科の植物には、森林の植物もありますが、草原や荒地の植物が多く、元はユリのような花弁を持った虫媒花から、虫があてにできない荒地で、風媒花として特殊化したグループと考えられています。花弁や蜜腺を省略し、保護機能だけ残した頴とおしべとめしべだけを持った、簡素化された花、それがイネ科植物の花です。
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