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Nag00262 (更新日:2017.5.19) 第一報告者:都市基盤整備公団, 2000.3.31
[以下、東京都高尾自然科学博物館パンフレットより許可を得て引用] 別名ジゴクノカマノフタというのは、地面にべったり広がった姿からの連想らしく、春早くから地獄などという名前にはふさわしくない、濃い紫の小さな花をたくさん咲かせます。 地面にはりつくように枝葉をひろげるのは、とてもぜいたくなやりからです。これなら風当たりも弱く、太陽の光を受けて暖かく、まだ気温が低い早春でも十分活動できて、おまけに根から吸った水や栄養を送るのも楽でしょうが、まわりに他の草が茂っていないところでないと、すぐに他の草の影になって日も当たらなくなってしまうので、できないことです。事実、他の草が茂り始めると、キランソウはひょろひょろと立ち上がろうとするかのように伸びてきます。同時に、赤みがかっていら葉も、緑色になり、何となく葉の厚みも色も薄くなってきます。 良く似た種類にタチキランソウAjuga makinoi Nakaiという植物があり、これは茎が斜め上に向かって伸びることから名前が付きましたが、全体の姿がかは、はっきり区別できません。見分け易い特徴は、花弁の上側に出る二つの裂片がごく小さいキランソウに対して、タチキランソウでは少し大きく、三角に飛び出していることです。ところが、こうして“キランソウ”を見ていくと、高尾山にはキランソウがしかなく、すぐ近くの丹沢にはタチキランソウがたくさんあるのです。 こんなに近くて陸続きなのに、どうして高尾山にタチキランソウがないのでしょう?タチキランソウは、高尾山に一番近い所では、どこまで生えているのでしょう?たねの散らばり方が、何か関係あるのでしょうか?では、たねの形はだんなだったでしょう? 植物の分布には、時に、単純に環境の違いとして片付けることのできない現象が見られます。ほんとうは、どんな植物も、単純に環境と関係づけていろいろなことを説明できるわけではないし、環境の中の何が大事なのかもよく考えてみなければなりません。植物が感じている環境は、私たちが感じているものとは違うかもしれません。生活の仕方が違う以上、感じているものも違う方が自然です。タチキランソウの不思議な分布は、植物の世界に、まだ私たちの知らないことがたくさんあるよ、と教えてくれます。
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